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様々な土地評価について
土地の評価額は、私たちが生活する上で様々な場面で関わってきます。
不動産の売買、公共用地の買収、相続税の計算、固定資産税の支払い、など、その評価基準によって金額が大きく変わることも珍しくありません。
私自身、弁護士になる前に政府系の企業に勤務しておりましたが、当時は、この土地評価を、日常的に、膨大な量の土地について行っていた時期がありました。
また、弁護士や税理士になってからも、たくさんの種類の土地評価に接しています。
この度は、様々な土地の評価額について簡単に解説させていただきます。
1 そもそも、なぜ土地評価基準は複数存在するの?
土地の評価基準が複数あるのは、それぞれの目的が異なるからです。
例えば、実際に土地を売買する際の価格と、税金を計算するための価格は、必ずしも一致する必要はありません。
それぞれの評価基準は、特定の目的に沿って、公平性や合理性を保ちながら、定められています。
2 実勢価格(取引価格)
実勢価格とは、実際に市場で取引される土地の価格です。
不動産会社による査定価格がこれに該当し、売買の際の重要な指標となります。
また、裁判所が相続や離婚の際の財産分与などの手続きで土地の評価を行う際にも、実勢価格が基準の一つとして考慮されます。
この価格は、通常、不動産会社が、周辺の取引事例や市場動向を基に査定を行うことにより算定されます。
実勢価格による土地評価が、あらゆる土地評価の中で一番高くなると言われています。
3 固定資産税評価額
固定資産税評価額は、固定資産税や都市計画税を計算するために用いられる評価額です。
実勢価格よりも低い水準で評価されることが一般的で、おおよそ実勢価格の約7割程度と言われています。
4 路線価
路線価は、相続税や贈与税を計算する際に用いられる評価額です。
道路に面する土地の1平方メートルあたりの価格を示しており、実勢価格のおおよそ約8割程度と言われています。
路線価は、国税庁が毎年発表しています。
5 地価公示価格
地価公示価格は、国土交通省が毎年発表する土地の価格です。
全国の標準地を選定し、不動産鑑定士が鑑定評価を行い、それをもとに国都交通省が結果を公表します。
一般の土地取引の指標となるだけでなく、公共用地の取得価格の算定基準としても活用されます。
この価格が一番、実勢価格に近いものとなり、地価公示価格の1.1~1.2倍が実勢価格の目安と言われています。
6 都道府県基準地価格
都道府県基準地価格は、地価公示を補完する目的で、各都道府県が発表する土地の価格です。
地価公示と同様に、不動産鑑定士が鑑定評価を行い、それをもとに都道府県が結果を公表します。
地価公示の調査地点が少ない地域において、より詳細な土地価格の情報を提供します。
地価公示と同様に、基準値価格の1.1~1.2倍が実勢価格の目安と言われています。
7 不動産鑑定士による土地評価
不動産鑑定士は、不動産の専門家として、様々な目的で土地の評価を行います。
不動産鑑定士による土地評価は、上記の通り、地価公示、都道府県基準地価格を算出する際の鑑定評価として利用されることもありますし、公共用地の買収の際に、土地価格の正確性を担保する際に添付されることもあります。
主な評価方法として、以下の2つがあります。
・取引事例比較法
周辺の類似した取引事例を参考に、土地の価格を評価する方法です。
・収益還元法
その土地が生み出す収益に着目し、土地の価格を評価する方法です。
賃貸物件や事業用地の評価に用いられます。
8 まとめ
土地の評価基準は、それぞれ異なる目的で使用されており、実勢価格、固定資産税評価額、路線価、地価公示価格、都道府県基準地価格、不動産鑑定士による評価など様々な土地評価があります。
例えば、土地を他者に売却したり、相続などで、遺産分割を行う場合には、実勢価格を用いなければ不利益を被る可能性があります。
また、相続税の基礎控除の計算をする際に、実勢価格をもとに計算して課税になるとしても、路線価は上記の通り実勢価格よりも1~2割程度低額ですから実際には相続税がかからないということも多々あります。
よって、上記の通り、それぞれの目的に沿ってどの土地評価額を用いなければならないのか知ることがとても重要となってきます。
それぞれの評価基準の違いを理解するには、弁護士、税理士の専門家のアドバイスを受けながら、利用目的にそって間違いのないように行うことをお勧めします。
以 上
相続時精算課税って何?
1 相続時精算課税制度とは?
①簡単にいうと、どういう制度なの?
相続時精算課税制度とは、贈与税と相続税を一体化して課税する制度です。
この制度を利用すると、毎年の贈与額の累計額が2500万円までならば、贈与税は非課税(特別控除)になります。
また、令和6年の法改正により、上記の特別控除とは別に、年間110万円までの基礎控除が新設されました。
この基礎控除分は、相続時に相続財産に加算することは不要です。(生前贈与加算の対象外)。
②税率
この制度を利用した場合の贈与税額は、2500万円を超えた部分に、一律20パ-セントの贈与税が課されます。
③「相続時精算課税」の意味は?
「相続時精算」の名の通り、暦年の110万円を超えた累積贈与額は、相続時には、相続財産に加算され、相続税の課税対象となってきます。
④適用される対象者は?
この制度を利用できる対象者は、原則として60歳以上の父母や祖父母(贈与者)から、18歳以上の子や孫(受贈者)に対して財産を贈与する場合に適用することが可能です。
⑤具体例で教えて?
例えば、次のような事例を検討してみましょう。
父から子に合計3000万円相当の財産を贈与する際に、①ある年に2600万円を贈与し、②翌年に100万円を贈与し、③翌々年に100万円を贈与するといったように、毎年100万円ずつを贈与した場合、
・1年目は、
2600万円-基礎控除110万円=2490万円
この年は、上記の通り、累積贈与額が特別控除2500万円を下回るため、贈与税は非課税になります。
・2年目
2490万円+100万円-基礎控除110万円=2480万円
この年も、累積贈与額が特別控除2500万円を下回るため、贈与税は非課税になります。
・3年目
2480万円+100万円-基礎控除110万円=2470万円
この年も、累積贈与額が特別控除2500万円を下回るため、贈与税は非課税になります。
・4年目
2470万円+100万円-基礎控除額110万円=2460万円
この年も、累積贈与額が特別控除2500万円を下回るため、贈与税は非課税になります。
・5年目
2460万円+100万円-基礎控除額110万円=2450万円
この年も、累積贈与額が特別控除2500万円を下回るため、贈与税は非課税になります。
以上からおわかりのように、上記の通りの贈与を行っていけば、実質、贈与税を支払うことなく、子に多額の資産を移転することが可能となります。
他方で、上記の例で、仮に5年目の贈与額が300万であったとした場合は、累積贈与額が2650万円(2460万円+300万円-基礎控除額110万円)となりますから、2500万円の特別控除額を超えた差額である150万円に、税率20パ-セントの贈与税(=30万円)がかかってきます。もっとも、この支払い済みの贈与税額は、相続時に算出した相続税額から控除して精算することができます。
相続時清算については、仮に、上記の令和5年の時点の財産関係で相続が発生した場合には、累積贈与額である2450万円がその他の相続財産に加算されて、相続税の評価額が算出されます。
2 どういうメリットがあるの?
①相続税が、基礎控除で非課税の人にはメリットが大きい
上記に記述したように、この制度を利用しても、相続時に、累積贈与額(=暦年の110万円を控除した贈与財産の累計額)が相続財産に加算され相続税が加算されるならば、あまり意味がないのではと思った方がおられるかもしれません。
しかし、相続税には、基礎控除(3000万円+600万円×相続人)が認められていますので、もともと相続税を課されないケ-スがあるのです。
よって、相続税が発生しないケ-スなら、実質非課税で、住宅などの資産価値の大きい財産を、2500万円(+毎年110万円)までの範囲内で、両親などから早めに子や孫に移転することが可能となります。
②暦年課税と比べ相続税が低額になる場合がある
現行の暦年課税制度(=課税年度の合計額に応じて、贈与税額を計算する制度のことで、基礎控除110万円が認められている。)では、相続が発生した場合には、相続開始前7年(最長)以内の贈与額は、金額の大小にかかわらず、相続財産に加算しなければなりません。
しかし、相続時精算課税制度を利用すると、課税年度に、基礎控除分である110万円までの贈与しかなかった場合には、その部分については贈与税の課税はなく確定申告も不要で、これに加え、令和6年の法改正により、110万円を超えた場合も、相続時に、課税年度で110万円までの累積贈与額は、相続財産に加算することは不要となりました。
よって、相続時精算課税制度を利用した方が有利となるケ-スが相対的に増えたといえるでしょう。(ただし、贈与期間が長期にわたる場合、相続財産の総額が著しく大きい場合はこの限りではありません。)
③将来値上がりしそうな財産の節税対策とすることができる
この制度を利用すると、相続税の申告の際に、贈与時の時価額で相続財産に加算されるため、贈与後に価額が上昇した場合にも、値上がり前の低い価額で相続税を計算することができます。
よって、将来値上がりしそうな株や不動産を、評価額が低いうちに贈与しておけば、将来の高い評価額で相続税を計算されるのを避けることができます。
同様に、収益を生む財産(賃貸不動産など)の節税対策にすることができます。
すなわち、アパ-トなどの収益物件を贈与すれば、贈与後の家賃収入はすべて受贈者(子や孫)のものとなり、贈与者の相続財産が増えることを防ぐことができます。
④特定の財産を、特定の相手に、確実に譲り渡すことでできる
この制度を利用すると、上記①でみたように、遺言よりも確実に、特定の財産を特定の者に、生前に譲り渡すことができます。
特に、事業用資産(自社株など)や特定の不動産など、将来の相続争いになりそうな財産について、あらかじめこの制度を利用して贈与しておくことにより、将来の紛争を未然に防ぐ効果が期待できます。
3 それでは、この制度を利用することによるデメリットはあるの?
①相続時精算課税選択届出書の提出が必要で、後に、暦年課税制度へ戻せなくなる
この制度を利用するには、精算課税による贈与を受けた最初の年の翌年の確定申告期限までに、相続時精算課税選択届出書を提出することが必要となります。
そして、この制度を一度選択すると、その後、同じ贈与者からの贈与を受ける場合には相続時精算課税制度が適用され、変更・撤回ができません。
したがって、将来の税制改正や、贈与者の資産状況の変化により暦年課税の方が有利になる事態が生じたとしても、暦年課税に戻すことができなくなります。
②この制度を採ると、相続時に「小規模宅地等の特例」を適用することができなくなる
この小規模宅地等の特例とは、自宅の敷地(特定居住用宅地等)、事業用宅地(特定事業用宅地等)等であれば、それぞれ、最大330平方メ-トル、最大400平方メートルまでの評価額が80%減額されるという制度であり、相続財産が基礎控除を超え相続税が課税される場合には、非常に大きな節税効果を持つ制度です。
よって、この特例が使えなくなることで、自宅や事業用宅地の評価額、その割合が高い場合には、相続税の負担が増え、結果として相続時精算課税制度を採用しなかった方が節税となるケースが生じます。
4 最後に
上記は制度の概略を述べたものです。
この制度を利用すべきか否かは、本制度の詳細な適用要件、その効果はもちろん、関連する各種法制度の詳細を正確に理解したう上で、ご自身やご家族の親族関係、財産状況、生活状況、将来の見通し等を正確に把握することにより、慎重に判断することが必要となってきます。
したがいまして、お客様のおかれている状況によっては、本制度を利用するよりも、公正証書遺言・自筆証書遺言により財産を移転する方法、暦年課税制度を採用し小規模宅地等の特例を採用する方法等の方が、より有利となるケ-スも十分に考えられます。
よって、弁護士や税理士などの専門家に相談した上で、手続きを進めるようにいたしましょう。
以上
不倫慰謝料の裁判はどんな感じになるの?
1 不倫慰謝料請求で裁判になるケースとは
不倫慰謝料請求を行う場合、まずは、相手方に内容証明郵便を送付してこちらの言い分を伝え、その後、相手方と示談交渉を行います。
多くの事件は、相手方も弁護士に依頼し、代理人同士の交渉となり、お互いの言い分を繰り返しながら、双方にとって妥当と認められる額で和解に至ります。
しかし、相手方によっては当初から不倫の事実を否認し、最後まで一切の支払いを拒絶するケースがあります。
このような場合、お客様と協議の上、訴訟を提起することがあります。他方、証拠が希薄な場合は、訴訟を断念することもあります。
それでは、不倫慰謝料請求の裁判はどのような形で進められ判決に至るのでしょうか。
また、裁判で不倫を否認した場合、それが認められることはあるのでしょうか。
2 不倫慰謝料の裁判とその証拠について
相手方が不倫を否認している場合において、不倫慰謝料の請求側の主張が認められるか否かは、提出する証拠の種類や内容によって大きく左右されます。
まず、探偵により、ラブホテルに二人で出入りする写真が撮影されていれば、不倫の事実を合理的に立証する証拠として重要な意味を持ち、慰謝料の請求が認められる可能性は相当程度に高くなると言えます。
それでは、そのような証拠がない場合は、裁判所は、どのように不貞の事実を認定するのでしょうか。
この点、裁判所は、不倫の事実を間接的に証明する証拠を総合的に組み合わせることで、不倫の事実を認定することがあります。
具体的に、それぞれの証拠がどのように評価されるかを見ていきましょう。
①探偵調査
探偵の調査報告書は、客観的な証拠として非常に重要です。
ラブホテルに出入りする写真でなくても、配偶者が、相手方の居住する住居に出入りする写真があり、その頻度などが写真とともに複数回にわたり詳細に記録されていれば、不貞行為の立証に大きく貢献しうるものとなるでしょう。
②配偶者と相手方のメール、手紙など
メール本文や手紙などの内容に、親密な恋愛関係を示すやり取りや、肉体関係を想起させる内容があれば、有力な証拠となります。
ただし、メールや手紙だけでは不貞行為があったと断定することは難しいため、他の証拠と組み合わせて主張する必要があります。
③配偶者のGoogle位置情報など
配偶者のGoogle位置情報が、相手方の居宅やホテルなどを頻繁に示している場合、上記②と同様に、不貞行為を裏付ける重要な間接証拠となります。
③Suica履歴
Suicaの利用履歴から、相手方の居宅近くの駅やラブホテルなどの最寄り駅での利用が確認できれば、上記②③と同様に、不貞行為を裏付ける間接的な証拠となります。
④まとめ
裁判所は、以上のような証拠を総合的に考慮して、配偶者と相手方が親密な関係にあり、不貞行為があった可能性が高いと合理的に考えることができれば、不倫の事実を認め慰謝料の請求を認容します。
3 相手方の反論や不貞行為を否認する理由について
弁護士が慰謝料請求の訴訟提起を行う場合は、配偶者の自白以外にも、上記のような様々な客観証拠を提出して訴訟提起を行うことがほとんどです。
よって、相手方としては、なかなか反論することは難しいだろうと考えられますが、予想に反して不貞行為を否認する主張を行ってくる場合も考えられます。
たとえば、請求側で、相手方の家に頻繁に訪問しているGoogleの位置情報を取得して、これをメール履歴やSUICA履歴とともに辻褄を合わせて主張し、配偶者が相手方の自宅で一緒に過ごしたと主張したとしても、相手方においては、自宅で多数回にわたり会っていたのは、会社内で取得の推奨されている資格試験の勉強を一緒に行っていたとか、そのような主張を行ってくることが考えられます。
また、相手方の居宅に通っている回数がそんなには多くない場合には、二人で仕事の話をしていただけであった、などといった反論をしてくることも考えられます。
「一見してそんなの事実じゃないでしょう?」と思われるような反論でも、裁判所は、公平な第三者の立場から、そのような主張について慎重に吟味してくれます。
ただ、そのような「普通に考えて嘘でしょう」というような反論は、裁判所が認めることは、ほぼないと言って良いでしょう。
したがいまして、通常は訴訟でそのような主張をしてもあまり意味はないと考えられますが、相手方の立場からすると、そのような主張を最後まで押し通すことに、それなりの意味があることが考えられます。
最後まで否認されるケースでは、訴訟手続き上、双方の書面での言い分を主張し尽くした後に、原告、配偶者、被告等の証人(当事者)尋問を経て、判決に至ります。
そして、尋問を行った当日、尋問の直後に、裁判所により、もう一度和解を勧められることが多いです。
この時には、裁判官はある程度の心証をとっており、それを開示して説得的に和解を進めてくれます。
ただそれでも和解に至らないケースがあります。
以上のように、最後まで争われ、尋問手続きまで行った場合には、原告本人や被告、配偶者などは多大な労力を使い消耗し尽くしてしまいます。
代理人側も事前準備が大変でして、尋問期日の1週間くらい前からは相手方主張の矛盾点を浮き彫りにして、戦略を立てて臨みます。
4 不倫慰謝料請求を有利に進めるために
上記の通り、不倫慰謝料の請求は、相手方において否認されると、精神的にも肉体的にも多大な労力を使ってしまいます。
よって、できる限り和解で解決するように、当初から弁護士によく相談して進めていくのが合理的であると言えるでしょう。
有利に進めるには、予め弁護士に相談した上、次のような点を整理しておくことをお勧めします。
①証拠の信憑性
探偵調査報告書は、信頼できる探偵事務所に依頼し、詳細な報告書を作成してもらうことが重要です。
メールや位置情報、Suica履歴は、改ざんされていないことを証明できるように、予め弁護士に提出して確認してもらい、保管してもらいましょう。
②証拠の関連性
それぞれの証拠が、不貞行為をどのように裏付けるのか、具体的に説明できるように準備しましょう。
例えば、位置情報とSuica履歴が、同じ日に同じ場所を示している場合、その関連性を強調することで、証拠の説得力が増します。
また、上記の証拠がメールの内容と辻褄が合う場合には、さらなる証明力を持ちます。
③専門性の強い弁護士を選ぶこと
慰謝料請求、特に訴訟提起まで複数回行ったことのある専門性の強い弁護士に相談し、証拠の収集や整理、書面の作成などを依頼することをおすすめします。
弁護士は、法的な知識や経験に基づいて、あなたの主張を効果的にサポートしてくれます。
5 最後に
上記の点に注意して、しっかりと戦略をたてて準備を行えば、交渉段階でたとえ相手方に否認されることがあったとしても、その主張を覆し相手方に不貞を認めさせて、示談に至る可能性は十分にあります。
ぜひ、弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
以上
特定退職金共済の自己破産手続き上の取り扱いについて
自己破産手続きを担当しておりますと、お客様の勤務先の会社で、特定退職金共済をかけている方がいらっしゃいます。
この特定退職金共済制度の掛金は、自己破産手続きにおいては、どのように取り扱われるのでしょうか。
同様に退職金共済制度の一つである中小企業退職金共済や建設業退職金共済との自己破産手続き上の取り扱いについても、触れてみたいと思います。
1 特定退職金共済って何?
特定退職金共済とは、所得税法施行令73条に規定される特定退職金共済団体により運営される社外積立型の退職金制度です。
このような特定退職金共済制度は、企業が独自に設計・運営する退職金制度とは、その運営主体において区別されます。
企業におけるメリットとしては、特定退職金共済制度に加入し、掛け金を特定退職金共済団体に支払えば済み、加入や給付金の支払いなどの事務手続きが簡略化されていること、また、掛け金を損金などに計上できること、などのメリットがあります。
2 破産法上の取り扱いはどうなるの?
破産手続きに際しての評価としては、同じく退職金共済制度の一つである中小企業退職金共済や、建設業退職金共済が差押禁止債権とされている(中小企業退職金共済法20条)のに対して、特定退職金共済には差押え禁止の規定がありません。
したがいまして、差押え可能なことから、破産手続き上は、通常の退職金債権に類似したものとして取り扱われ、実務上は、その支給見込み額の8分の1(退職間近な時などは4分の1)が財団組み入れとなります。(破産管財実践マニュアル「第2版」288頁、同148~149、同296頁参照)
ただし、このような取り扱いにつきましては、お客様のご年齢やご収入、健康状態、自己破産手続きに至った事情、ご家族や御両親の御年齢、健康状態、経済事情などに鑑みて、裁判所により自由財産拡張の余地があるものと思われ、私自身、実際に認めていただいた例がございます。
3 最後に
同じ外部積立ての退職金共済制度でありながら、差押え禁止であったり、そうでなかったり、その違いについてきちんと説明されている法律書はありませんでした。
中小企業退職金共済については、独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営しているから差押え金禁止なのでしょうか…
どちらもよく似た退職金共済制度なので、実質的にお金を負担している勤労者であるお客様の立場からすると同じように見えます。
お客様の方で、上記2の最後の方で述べたような事情がある方は、事前に、弁護士によく事情を説明して、自由財産拡張の申立てを行うことをお勧めいたします。
以上
八王子市についてご紹介させていただきます!
本日は、僭越ながら、八王子市についてご紹介させていただきます。
八王子市は、東京都の多摩地域に位置し、人口約56万人を擁する大きな市町村です。
古くは甲州街道の宿場町として栄え、絹織物の産地としても発展しました。
また、江戸時代は、千人同心という大規模な武士団が置かれ、その長で旗本でもある千人頭に率いられ、幕府の軍事組織としての役割も備えておりました。
そのような経緯から、現在も歴史的な面影を各所に見ることができます。
八王子市の最大の魅力は、豊かな自然だと思います。
特に高尾山は、都心からわずか1時間ほどでアクセスできる人気の観光スポットです。
ミシュランガイドにも掲載され、年間を通して多くの登山客が訪れています。
高尾山は夜になるとムササビの滑空する姿も見られ、観察ツアーも開催されています。
山頂には「高尾山ビアマウント」というビアガーデンがありますので、お酒を飲みながら関東平野を一望できる絶景を楽しむことができます。
また、高尾山には、薬王院という由緒ある寺院があり、パワースポットとしても知られています。
八王子市は、都心へのアクセスも良好で、JR中央線、横浜線、八高線、そして京王線が乗り入れています。
新宿や東京駅へは、乗り換えなしでアクセス可能です。
市内には、多くの大学が集まっており、学生街としても賑わっています。
ショップや飲食店が多く、活気あふれる街並みが魅力です。
以上述べましたように、八王子市は素晴らしい街です。
皆様ぜひ一度、八王子市にご訪問されてみてください。
自己破産申立ての際の義理の父母への住居費や生活費の支出について
☆自己破産申立ての際の義理の父母への家賃、住居費や生活費などの支払いについて
1 自己破産の手続きにおいて、同居している義理の父・母に、家賃、住居費や生活費としての名目で、毎月一定額を支払っていた場合、これらの支出は正当な支出として認められるのでしょうか。仮に、裁判所や管財人に認められないと判断された場合には、財団組み入れなどの措置が取られる可能性があります。一般的に考慮される要素や、認められる可能性を高めるためのポイントなどについて考えてみます。
2 考慮される要素として考えられること
①居住に至る経緯や必要性・合理性
なぜ義理の父・母の家に住む必要があるのか、例えば、経済的な理由、介護の必要性など、親子間なので特別な理由などないかもしれませんが、理由については整理できる方がよいと思います。また、家賃や住居費として支払っている金額が、近隣の家賃相場と比較して妥当か、この点についても確認しておく必要があるでしょう。極端に高くなっている場合は、支出の一部または全部が否認される可能性も出てくるでしょう。
他方で、毎月、義理の父や母から、子どもが小さく共働きなので、食事を作ってもらうなどの援助を受けている場合は、この点についても、いくらかのプラスアルファの支出を基礎づける要素になってくるでしょう。
②証明書類はあるのか
実際に相当額の支払いを行っていることを証明できるか。たとえば、領収書、銀行振込明細などがあるとよいと思います。義理の父や母との間で、賃貸契約書などの書面を交わしていることも有利な材料になりうるものと思われます。
③家計収支
自己破産申立人の収入や支出の状況の中で、相当額の住居費等の支払いを行うことにより、家計の状況は成り立っているのかも、今一度確認しておくことが必要でしょう。家賃相場としては適切な額に抑えられていても、本人の収入からすると過大な支出となっている場合は、やはり改善すべき余地があるでしょう。
④裁量免責
全体のバランスからすると、免責不許可事由(浪費、ギャンブルなど)の有無、債務超過の原因や破産に至った経緯、破産者の反省の度合いや、更生の可能性も参考とされる要因になるでしょう。
3 認められる可能性を高めるためのポイント
義理の父・母との関係であるならば、証拠書類として、賃貸契約書などを作成しているとよいでしょう。契約書などは少し堅苦しくてという場合には、取り決めを行った時に、家賃、契約期間、退去時の条件などをメモした書類を交換しておくのもよいでしょう。また、支出の証拠として、その都度、領収書を受領したり、銀行振り込みとすると良いでしょう。支払う額は、あまり高くないように設定しておきましょう。一応、近隣の家賃相場を確認しておくとよいと思います。
4 まとめ
義理の父や母に支払っている家賃や住居費が認められるかどうかは、個別の事情によっても異なってくると思います。認められる可能性を高めるためには、賃貸借契約書や、取り決め時にメモを作成し、支払い時には領収書を発行してもらい、または、銀行振込で支払うとなどしておくとよいでしょう。
そして、自己破産の経験豊富な弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
以上
ハウスクリーニング特約って何?
ハウスクリーニング特約って何?
1 ハウスクリーニング特約って何?
ハウスクリーニング特約とは、賃貸契約終了時に発生するハウスクリーニング費用の負担について定めた特約のことです。賃貸物件における原状回復義務は、通常の使用による損耗や経年劣化を除き、借主にあります。そして、借主は、退去時の原状回復として、賃貸物件を入居当初の原状に復して貸主に引き渡します。よって、本来、原状回復措置がきちんとなされていれば、本来、借主が、ハウスクリーニング費用を必ずしも支払う必要があるわけではないのです。
しかし、ハウスクリーニング特約がある場合は、その費用が予め契約書に定められていて、退去時には、貸主がハウスクリーニング費用としてその額を返還しないのが通常だと思われます。したがって、実質的には、借主がハウスクリーニング費用を負担することになるわけです。
果たして、このような特約は有効なのでしょうか。
2 消費者契約法や判例の考え方
国土交通省住宅局発行の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(平成23年8月)によれば、消費者契約法や最高裁判所の判例を踏まえ、ハウスクリーニング特約が有効となるための要件として、次の3つの要件を満たす必要があるとしています。
①特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
例えば、賃料が相場よりも低く設定されている代わりにハウスクリーニング費用を借主が負担する、また、ハウスクリーニング費用として予め徴収される額が一般的に見ても妥当であると考えられる範囲内の金額に抑えられている、といった事情がこれに当たると考えられます。
②賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
これはすなわち、借主側で、本来、ハウスクリーニングなどの費用は、賃貸物件を通常の清掃を実施し原状に復して退出していれば、借主が負担する必要はないところ、あえて、それを特約により借主に負担させることになっていることを、借主自身が認識していることが必要です。
この点については、ここまでの認識を持っている借主はあまり多くないのではないでしょうか。
③賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
②について承知したうえで、借主が義務負担の意思表示をしていることです。
3 運用の実態
おそらくハウスクリーニング特約は、多くの賃貸契約に組み込まれているものと思われます。ただ、それが有効とされるには、厳密には上記2に掲げた3つの要件が必要となってくるのです。
4 消費者の注意点
消費者としては、契約締結前に、ハウスクリーニング特約の内容をよく確認する必要があると思います。不明な点は、不動産業者に質問して、十分に理解することが重要です。
そして、退去時の立会いの際には、貸主または不動産業者と立会い、物件の状態を確認しましょう。ハウスクリーニングの必要性や範囲、費用について、合意を得ることが大切です。また、入・退去時に、証拠の保全:として、入居時と退去時の物件の状態を写真や動画で記録しておきましょう。トラブルが発生した場合の証拠となります。
さらに、争いとなった場合には相談窓口を利用することも有効です。不当な請求やトラブルが発生した場合は、消費者センターや弁護士などの専門機関に相談しましょう。
5 まとめ
ハウスクリーニング特約は、借主にとって不利な内容になる可能性もあります。契約内容をよく確認し、不明な点は質問するなど、慎重に対応することが大切です。
以上
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所在地
〒192-0046東京都八王子市
明神町4-7-3
やまとビル3F
0120-41-2403


