住宅条項付き個人再生手続きで清算価値が高くなるケース
住宅条項付き個人再生手続きを利用すれば、住宅ローン以外の借金を原則5分の1まで圧縮しつつ、住宅ローンの返済は従前通り継続することにより、多くの債務者にとって、住宅を手放すことなく生活再建を図ることができます。
ただ、この手続きを利用しても、不動産の清算価値(不動産の時価-住宅ローンの残額)が大きくなる場合には、注意が必要です。
なぜならば、個人再生手続きによる返済額を算定する場合には、住宅ローン以外の債権の原則5分の1の額と、上記の不動産の清算価値を比べ、より高い方を採用しなければなりませんので、住宅ローンが後もう少しで終わるようなケースや、住宅の価格が高騰しているケースなど、この清算価値が大きくなりすぎて、個人再生手続きでは返済することができないというケースが生じます。
同様に、返済額が高くなるケースとしては、偏波弁済といって受任後に一部の債権者だけに優先して返済した場合や、受任後にギャンブルなどによる費消行為がある場合などは、これらの支出額も清算価値に入れなければならない運用ですので、このようなケースも返済額の増大要因として、注意する必要があります。
さらに、最近、取り扱った事例なのですが、この清算価値が大きくなりうるケースとしては、次のようなケースもありますので注意しておく必要があります。
あまり多いケースではないのですが、親族などの不動産により再生債務者の住宅ローン債権について、共同担保権が設定されているケースです。
たとえば、評価額が3000万円の不動産甲を、再生債務者である夫Aとその妻Bが持ち分2分の1ずつ共有しており、Aの債務1800万円を保証するために、不動産甲全体に抵当権が設定され、Bは物上保証人であるというケースです。
このような事例の場合、裁判所の清算価値の考え方では、不動産競売実務における考え方を基本とすることから、単純に、債務者の所有する2分の1の不動産価格から、残債務額を控除したものが清算価値である、というようにはいかなくなってくるのです。
どういうことかというと、たとえば、上記の事例ですと、Aの不動産甲についての持ち分価格である1500万円から、Aの残債務額である1800万円を控除するから、清算価値はゼロであるという風には即座にはならないのです。
この点について、東京地裁破産再生部では、原則として、不動産競売実務の考え方を採用して、民法392条1項の類推適用により被担保債権を共有持分の価格に割り付けて配当するのが通常であるとしますが、物上保証人から配当期日までに抵当権の代位権行使の意思表示がなされる可能性が高いこと等、個別具体的な事情を考慮して、個人再生委員の意見に基づき、同項を類推適用せず、まず主債務者の持分に相当する代金から配当すべきであるとする立場をとった事例があるとされています。(「個人再生の手引き」第3版243頁)
よって、この原則にあたる立場を上記の事例に当てはめると、通常は、被担保債権の額についても共有持分の価格に割り付けられますので、Aについての被担保債権の額は900万円ということになり、剰余金は、不動産甲の持分価格である1500万円から、被担保債権額である900万円を控除した600万円となり、これを清算価値とするということになります。
もっとも、東京地裁破産再生部の立場では、上記の通り、物上保証人から配当期日までに抵当権の代位権行使の意思表示がなされる可能性が高いこと等を考慮して、まず、主債務者の持分に相当する代金から配当すべきであるとする立場をとった事例があるとされています。
よって、この考え方に基づいて算定すると、上記の事例では、物上保証人である妻Bが代位権を行使することが通常である等の事情が主張可能となれば、まずは、債権額である1800万円について、Aの持ち分である1500万円から配当を行い、残りの債務額である300万円について、Bの持ち分から配当を行うことになり、この考え方が採用されると、Aについての清算価値は、ゼロということになります。
ちょっとテクニカルな感じはしますが、裁判所としては、競売実務を基本として理論構成を行いつつ、究極的には物上保証人の意思やその他の事情に基づいて清算価値(返済額)を算定するという立場を採られているものと思われます。
上述した通り、最近、このケースに類似する事例に遭遇したのですが、再生委員、裁判所におかれましては、上記の東京地裁破産再生部の見解に依拠して慎重に審理され、再生債務者の経済的更生に資する見解を採用していただいた事例がございましたので、紹介させていただきます。
以上
所在地
〒192-0046東京都八王子市
明神町4-7-3
やまとビル3F
0120-41-2403


